俺は無慈悲なクソの喫煙者
先週開いてなかった明大前のラーメン屋に再チャレンジしたが、行列がすごくて閉店時間前に締め切っていたのでまたダメだった。
それはそれとして飯は食いたいので駅前の定食屋に入ることにした。
14時過ぎでも半分くらい埋まった小汚い店内。
よい。
学生街らしい700円代でボリュームのあるメニュー、早稲田で言うところの舟形やのような雰囲気。
舟形やに通った大して遠くもない過去を振り返りつつ、タバコに火を付けて目の前の灰皿を引き寄せた時だった、左側から視線を感じた。
3つ隣のカウンター席に座る兄ちゃんがめちゃくちゃ睨んできている。
オムハヤシを食いながら、めちゃくちゃ俺を睨んでいる。
…?
目が合った。
彼は腕を振り回し、煙を嫌がる仕草をしながらも、視線だけはバッチリ俺と合い続けている。
口で言えよと思った。
そこまでできるメンタルがあるなら、俺みたいなヒョロガリメガネに一言言うほうがいいだろ。
あと俺はクソの喫煙者なので「禁煙の店に行けばよいのでは?」と思った。論破。
こんな時代なので仕方ないからと2吸いで火を消し、彼を見るとまだ睨んでいる。
なんでだよ。
後ろのテーブル席のドカタっぽい2人組がタバコに火を付けた。
そりゃ喫煙できる店だもんな。吸うだろ。ドカタは100%タバコを吸う。
彼はドカタに一瞬視線を送ったあと、また俺を睨みながらオムハヤシを食べ始めた。
クソめ。弱虫。
そうこうしていると俺のミックスフライ定食が来たので、食べ始めることにした。
彼はオムハヤシを食べ終わり、なお睨み続ける。はよ帰れ。
「すいません、目玉焼き単品で」
なんでだよ。帰れ!
メニューを見ると「目玉焼き ¥250」、高えな。
意図がわからなかったがミックスフライを食べ進め、再び彼を見ると目玉焼きについてた千切りキャベツを一切れずつ食べながら俺を睨んでいた。
俺が見やると、バッグから謎の錠剤を取り出して飲んだ。
時刻は14時40分、店内には俺と彼しかいなくなっていた。
最後のアジフライを食べ終わり、意を決してタバコに火を点けると、彼はわざとらしくでけえ咳をしながら店を出て行った。
俺は彼との勝負に勝ったと同時に25歳という大人の勝負に惨敗した。
彼は曇りの10月なのにデカくて黒い日傘をさして走って行った。
俺は喫煙者とか以前に人としてクソなので「死ねザコ」と思った。